AIなりすましを題材にした社内演習の作り方

旧版のニュース記述を実務解説へ改稿しました。公開日は旧版の公開日、本文の見直し日は2026年10月28日です。

以下は研修担当者向けの運用案です。記入例の組織・人物・数値・日付・資料名は架空で、導入実績や公的資料の引用ではありません。演習には一から作成した架空データを使います。

AIなりすましを想定した社内演習の目的

AI技術の進化により、音声やテキストを用いたなりすましによる詐欺のリスクが指摘されています。社内演習では、実在の人物の音声や顔を生成するような手法は避け、架空のシナリオを通じて、従業員が不自然な依頼や指示を見抜く能力を養うことを目的とします。特に、普段と異なる連絡経路や緊急性を装った指示に対し、冷静に判断し、適切な対応を取るための手順を確立します。

演習シナリオの作成と実施手順

演習シナリオは、従業員が日常業務で遭遇しうる状況を想定し、不審な点が含まれるように設計します。実在の人物を特定できる情報は含まず、架空の役職名やプロジェクト名を使用します。演習の実施は、以下の手順で進めます。

  1. シナリオの準備

    架空の人物(例:架空の「田中部長」)からの、通常とは異なる依頼を記述したテキストを作成します。例えば、「緊急で〇〇プロジェクトの予算を承認してほしい」「至急、取引先の口座情報を変更してほしい」といった内容で、普段の業務フローから逸脱する点を含めます。

  2. 演習参加者への説明

    演習開始前に、これは訓練であり、実在の人物や情報とは無関係であることを明確に伝えます。演習の目的と、不審な点を見つけた際の対応手順(後述)を説明します。

  3. シナリオの提示

    参加者に対し、作成したシナリオをメールやチャット形式で提示します。この際、送信元のアドレスや表示名も、わずかに不自然な点があるように設定することが考えられます。

  4. 対応の記録と評価

    参加者がシナリオに対してどのような対応を取ったか(例:上長に確認した、情報システム部門に報告した、無視したなど)を記録します。演習終了後、適切な対応が取れたか、改善点はないかを評価します。

架空の記入例:不審連絡報告票

演習中に不審な連絡を受けたと判断した場合、以下の報告票に記入し、指定された経路で提出することを想定します。

項目 記入内容
報告日時 2024年10月27日 10:30
報告者氏名 (架空の氏名)
所属部署 (架空の部署名)
連絡日時 2024年10月27日 10:00
連絡手段 メール
送信元(表示名) 田中部長
送信元(メールアドレス) tanaka.b@example-co.jp (架空のアドレス)
件名 【緊急】〇〇プロジェクト予算承認のお願い
本文の要約 〇〇プロジェクトの予算承認を至急依頼。通常の手続きを省略し、添付ファイルを開いて承認するよう指示。
不審に感じた点
  1. 通常、予算承認はシステム経由で行われるが、メールでの直接依頼だった。
  2. 添付ファイルを開くよう指示があったが、セキュリティ上の懸念がある。
  3. 送信元のアドレスが普段使用しているものと微妙に異なる。
取った対応 上長に口頭で確認。情報システム部門に報告。

確認経路と緊急連絡先の整備

不審な依頼や指示に直面した際、従業員が迷わず適切な行動を取れるよう、明確な確認経路と緊急連絡先を事前に整備しておくことが重要です。演習を通じて、これらの経路が機能するかを確認します。

  • 上長への確認:不審な依頼への返信や添付の連絡先を使わず、社内で事前に登録された連絡経路から上長または管理担当者へ確認します。声が似ていることだけで本人と判断せず、既定の承認手続きを使います。
  • 情報システム部門への報告: 技術的な不審点(例:不審なリンク、添付ファイル)がある場合は、情報システム部門に速やかに報告する体制を整えます。
  • 緊急連絡先リスト: 部署ごとの緊急連絡先リストを整備し、従業員がいつでも参照できるようにします。リストには、上長、情報システム部門、総務部門などの連絡先を含めます。

報告記録の重要性

不審な事象を報告する際は、その内容を正確に記録することが不可欠です。これにより、事後の調査や再発防止策の検討に役立てることができます。演習では、報告票の記入練習を通じて、以下の点を従業員に周知します。

  • 詳細な情報記録: いつ、誰から、どのような内容の連絡があったか、具体的に記録します。
  • 不審点の明確化: なぜ不審だと感じたのか、その理由を具体的に記述します。
  • 取った対応の記録: 報告者がどのような対応を取ったかを記録し、その後の対応状況も追記できるようにします。

これらの手順を演習で繰り返し実践することで、従業員は不審な状況に対する判断力と対応力を向上させることができます。演習の終了基準は、参加者全員が不審なシナリオに対して、適切な確認経路を通じて報告を行い、報告票を正確に記入できることとします。